『大本営参謀の情報戦記―情報なき国家の悲劇』堀 栄三 (文春文庫)

投稿者: たけし 投稿日:2007/09/29
カテゴリー:【新書・文庫】 【たけし】 【おすすめ度:☆☆☆☆

 今年4月のエントリー、『陸軍良識派の研究―見落とされた昭和人物伝』で紹介した堀栄三氏の自伝を見つけました。本書は30歳の若者だった彼が昭和18年に情報参謀に任官するところから始まり、太平洋戦争にて「マッカーサー参謀」の異名を穫る活躍を見せ、戦後自衛隊の情報室長を経て54歳で退官するまでを綴っています。その間彼が目にした大本営の舞台裏や日本の情報活動の実情、そして彼がどのように情報分析技術を身につけていったかが詳しく記されており、情報の専門家の視点で太平洋戦争から戦後にかけての日本を追体験できる内容になっています。特に、彼が想像を絶する情報収集活動を不眠不休で行った末に、アメリカ軍のフィリピン上陸作戦や日本本土上陸作戦の時期、上陸地点、規模をピタリと当てるくだりの見事さには、手の込んだスパイ小説でさえ霞んで見えるほどに圧巻されます。まさに現実は小説より奇なりと言ったところでしょうか。

 本書によれば、戦前の日本の情報活動は組織的に教育されたものではなく、個人の職人技に頼っており、そのような職人技を駆使して手に入れた情報も全く活用されなかったようです。しかも、戦後の自衛隊でのエピソードを見る限り、日本人が情報を分析する事によって得られるインテリジェンスよりも直感的な判断を好む習性は直っておらず、国家レベルでの統合情報機関も未だに構築されていない事がわかります。折しも今年は自衛官がハニートラップに引っかかるなどの情報漏えい事件が目立つ年であるため、60年以上昔の教訓も疎かにせず良く咀嚼する事も無駄ではないな、と感じた一冊でした。

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