『なぜ敗れたか日本海軍―孫子の名言に見る惨敗の真因』是本 信義 (光人社)

投稿者: たけし 投稿日:2007/07/31
カテゴリー:【新書・文庫】 【たけし】 【おすすめ度:☆☆☆☆

 日本はなぜ太平洋戦争でアメリカに敗れたのか?この問いは戦後60年間多くの人々が考え続けている問いです。そして様々な答えが出されました。最も反論が少ない答えは『アメリカの圧倒的物量に敗れた』でしょう。この答えの前にはおそらく日本人の誰もが納得し、それ以上の思索を止めてしまいがちです。しかし明治以降の戦いを見ると、日清戦争、日露戦争では、圧倒的な物量を持つ相手と戦い、いずれも辛くも勝利しています。つまり、時と場合によっては相手が巨大であっても有利に戦えるはずなのです。では、太平洋戦争では何故あのような惨敗を喫したのか?勝つ事が難しくとも、もう少しマシな負け方はできなかったのか?そのために、何が必要だったのかを考えてみましょう。

 本書は、その本質的な答えが情報軽視にあると分析しています。筆者の是本氏は元海上自衛隊士官であり、専門家としての深い知識と冷徹かつ合理的な思考をもって、旧海軍の情報軽視体質を分析し、直感に頼った独善的な情勢判断を批判しています。専門家というだけあって、掲載されている資料は日本側・アメリカ側共に豊富であり、ページ数に比して解説は非常に詳しく、客観的で、分かりやすくなっています。

 情勢判断には意図式(敵は〜するであろう)と能力式(敵は〜できる)があり、意図式は能力式よりも主観が大きく影響しますが、日本人は何故か意図式の情勢判断を好みます。しかし、意図式の情勢判断は、「敵は〜するはずだ」「敵も〜まではしないだろう」という事を早い段階で前提条件にしてしまうために、それにそぐわない情報は始めから無視される傾向にあります。本書では、日本の指導者層が多くの直感的な判断を行い、惨敗する様子が見て取れます。また、指揮官同士のコミュニケーションの不足も見逃せない短所です。この点については、山本 - 南雲と、ニミッツ - スプルーアンスのコミュニケーションの取り方の対比が印象的です。

 また、当時の日本とアメリカの兵器体系を比較し、アメリカの情報工学とシステム工学の優位性を指摘しています。つまり、たとえ日本がアメリカと同数の航空機や艦船を持っていたとしても、ソフトウェアとシステム化が二世代進んでいるアメリカが必ず勝つと断言しています。一瞬驚きますが、解説を見れば納得してしまいます。この例として、巻末の戦艦大和 VS 戦艦アイオワのシミュレーションが単純でわかりやすかったです。

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