2000年から2004年の4年間で全給与所得者のうち300万円以下の人が4倍に増加し、自己破産が10年で4倍となった。多重債務者は、推定で356万人に上るそうである。そのなかで社会問題化した1つに消費者金融の存在がある。本著は消費者金融に関する問題の変移や背景、問題点がまとめられた良著である。
前半では、消費者金融が注目されるきっかけとなった、グレーゾーン金利問題に関する経緯が示されている。グレーゾーン金利の解説だけでなく、消費者金融への取り締まりが強化された背景を裏側から描かれている点が筆者独自のものであり、興味深かった。加えて、どのような人が消費者金融を利用しているのか。多重債務者はどのような状況になっているのかという現実が示されており、改めて問題の大きさを感じさせられる。
また、後半ではグレーゾーン金利の取り締まりが強化後の消費者金融業界が解説されている。グレーゾーン金利問題が表面化した後の取り締まりの強化によって、消費者金融市場も淘汰が進み、2極化が生じている。中間の消費者金融がつぶれ、ヤミ金の増加が生じているのだ。
なぜヤミ金の増加が起きているのか?それは刑罰が軽すぎることに一因がある。実刑判決が出ることがまれなのだ。02年1年間で320人逮捕され、一審で実刑が出たのは12人のみであった。しかも罰金は300万円以下と低額に設定されている。つまり、充分に採算が取れるおいしい仕事になってしまっている訳である。
そして、巻末では多重債務者発生のメカニズムについて言及がされている。大手消費者金融は、返済にきた人に対して、無理矢理に貸す「押し貸し」を行っているそうである。新たに借りることが不必要な人に無理矢理に貸し付け、挙げ句の果てには年収以上に貸しているのだ。消費者金融側は新規需要開拓であり、営業努力と主張しているが、「不必要な押し貸しは営業努力でも何でもない。」と筆者は断罪している。もちろん、年収以上に借りてしまえば、返せるわけがない。多重債務者となり最後にはヤミ金融に手を出さざるを得ない状況になってしまう。
このように大手消費者金融とヤミ金は別々に機能しているのではなく、1つの仕組みとして成り立っている。つまり、大手消費者金融→ヤミ金という「負の連鎖」が問題であり、この連鎖を断ち切らなければ消費者金融問題の解決はない、というのが筆者の主張である。
これらの現状があるにも関わらず、マスコミが横並びにしか報道をしないのはなぜだろうか。それは、消費者金融批判がマスコミのタブーであるからである。消費者金融大手5社は年間800億円の広告費を拠出している。お得意さんの批判はできない、内向きの体質があるのだ。この点に関しては、勝谷誠彦『偽装国家 日本を覆う利権談合共産主義』を参考にされたい。また、山根節『経営の大局をつかむ会計』には、消費者金融のもうけのからくりが解説されている。そちらも参考にしていただきたい。
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